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小規模個人再生とは
個人再生は債務整理の一種で、借金を大幅に減額してもらえる制度です。
実は、その個人再生手続きには二種類あります。
その中の一つが「小規模個人再生」で、個人再生のほとんどでこの方法が選択されています。
では、小規模個人再生とは一体どういうものなのでしょうか?
もう一つの手続き(給与所得者等再生)とどのような違いがあるのでしょうか?
今回は、小規模個人再生について詳しく解説します。
1 小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの手続があります。
そして、この小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは以下のように複数あります。
なお、「給与所得者等再生」というと、給料をもらっている人はこちらを選択しなければならないように思いがちですが、サラリーマンであっても小規模個人再生を選択することはできます。
寧ろ、基本的に小規模個人再生を選択するのが一般的で、小規模個人再生だと何か障害がある場合に給与所得者等再生を利用します。
⑴ 要件の違い
個人再生は自己破産のように借金を全額免除することはなく、あくまでも借金を減額する制度です。そのため、手続後には借金を返済していく必要があります。
よって、個人再生をするには、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることが前提となります。
さて、小規模個人再生と給与所得者等再生の要件の違いは、この「収入の安定具合」にあります。
給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも収入の安定性が求められます。
給与所得者等再生は、給与または定期的な収入が継続的にあり、その収入額の変動幅が20%以内であることが条件なのです。
一方の小規模個人再生は、給与所得者等再生ほど収入の安定性が求められません。
⑵ 弁済金額の違い
小規模個人再生と給与所得者等再生は、個人再生後の弁済金額にも差が生じる可能性があります。
給与所得者等再生は、「法律が定める最低弁済額」「清算価値」「可処分所得の2年分」の3つの金額を比べて、最も高い金額を基準に返済します。
一方、小規模個人再生は「法律が定める最低弁済額」「清算価値」の2つのみを比べて、高い方を基準に返済します。
実は、給与所得者等再生で入る可処分所得に関する条件が最も高額になりがちです。
そのため、一般的には小規模個人再生の方が弁済金額は低めになります。
⑶ 債権者の同意の要否
小規模個人再生は、再生計画案に対する債権者による決議があるので、債権者の意向に従うことになります。
すなわち、債権者の半数以上が再生計画案に不同意のとき、または不同意の債権者の債権総額が全体の2分の1を超える場合は、小規模個人再生を選ぶことはできません。
その場合は給与所得者等再生か、他の債務整理方法を選ぶことになります。
給与所得者等再生は再生計画案に対する債権者による決議がないので、債権者の意向によらず手続を行うことができます。
しかしその分、要件は厳しく、弁済金額も高くなる可能性があるのです。
以前は債権者の同意が得られないケースは少なく、異議を唱えるのは政府系金融機関など一部の債権者に限られていました。
しかし、最近では異議を出す債権者も多くなってきているので、今後は給与所得者等再生を選択するケースが増える可能性もあります。
【小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべきか】
これまで説明した通り、小規模個人再生と給与所得者等再生であれば、基本的に小規模個人再生を選ぶ方が有利です。小規模個人再生の方が返済金額も少額となる可能性が高いので、通常は小規模個人再生を最初に検討します。
ただし、小規模個人再生は、債権者の同意を得られない場合は手続が廃止されてしまいます。予め同意を得るのが難しいことが分かっていれば、給与所得者等再生を検討することをおすすめします。
2 小規模個人再生の流れ
小規模個人再生は、以下のような流れで進んでいきます。
- 1.弁護士への依頼・受任通知の発送
- 2.個人再生申立に必要な書類の準備
- 3.裁判所への申立て
- 4.手続開始決定
- 5.債権額の確定
- 6.再生計画案の提出
- 7.書面決議・意見聴取
- 8.再生計画案の認可
- 9.再生計画に基づく支払い開始
大まかな流れになりますが、これは給与所得者等再生の場合も同じです。
7の「書面決議・意見聴取」ですが、小規模個人再生手続の場合、ここで債権者(頭数の半数以上、または債権総額の2分の1を超える債権者)が再生計画案に反対(不同意)すると、再生計画案が認可されない、つまり再生手続が廃止(打切り)となってしまいます。
給与所得者等再生の場合、債権者による書面決議はなく、意見聴取が行われますが、債権者が反対意見を述べても、裁判所はそれに拘束されずに認可・不認可の判断をします。
なお、手続き中には「履行テスト」が行われます。
このテストは、再生計画案の履行可能性を検証するために、計画弁済額相当額(毎月一定額の積み立て)を継続していけるかどうかをチェックするもので、指定口座へ返済予定額を毎月入金することになります。
3 小規模個人再生のメリットとデメリット
小規模個人再生にはメリットとデメリットがあるので、最後に、その特徴を押さえておきましょう。
なお、ここで紹介するものは、個人再生自体のメリット・デメリットとも言えます。
⑴ メリット
① 大幅な借金の減額が可能
個人再生では、元本を含めた債務の大幅な減額が可能です。
借金を0にする自己破産には敵いませんが、それでも借金を1/5~1/10程度まで圧縮できる可能性があるので、手続き後の返済はかなり楽になるでしょう。
② 財産の処分がなくマイホームも残せる
個人再生は、自己破産と違って自宅(マイホーム)を残せる可能性があります。
個人再生には、住宅ローンが残っているマイホームを持っている場合でも、その住宅を処分しないまま他の債務を減額できる制度(住宅ローン特則)があります。
住宅ローンが残っている持ち家は、債務整理をすると通常ならば抵当権を実行され競売にかけられてしまうので、それを避けられる個人再生は持ち家を手放したくない人には特にお勧めです。
自宅以外にも、ローン支払い済みの高価な車やブランド品など、手放したくない財産がある場合は個人再生を選択するのが良いでしょう(ただし、清算価値が高い財産がある場合は、個人再生後の弁済金額が高くなる可能性があります)。
③ 免責不許可事由や資格制限がない
自己破産では、免責不可事由や資格制限などがあります。
例えば、ギャンブルや浪費が原因の借金だと自己破産手続きに問題が生じる可能性があります。
資格制限に引っかかる職業だと停職や異動の必要が出てくるかもしれません。
個人再生であれば、このような問題を気にせずに手続を行うことができます。
⑵ デメリット
① 手続きが複雑で必要書類も多い
個人再生は、他の債務整理手続きよりも認可のための要件が多く、また、今後の返済能力を調査するための書類も多く必要となります。
仮に要件を満たせなければ個人再生ができませんし、書類の内容に不備がある場合は失敗する可能性・再提出等により手続き終了まで長い時間がかかることもあります。
しかし、このような手続き上の問題は、弁護士にサポートを依頼することで解決ができます。
弁護士は要件を検討した上でベストな債務整理方法をアドバイスしてくれるだけでなく、書類の収集や作成のサポート、裁判所手続きの代行もしてくれます。
② ブラックリスト・官報に掲載される
個人再生に限らず、債務整理をすると信用情報機関に5~10年記録が残るので、その間は新たな借入やクレジットカードの発行などはできなくなります。
このことを、俗に「ブラックリストに登録された」などと言います。
また、個人再生や自己破産の申立てをすると「官報」にも名前や住所が掲載されます。
官報を見ている人は少ないので、そこから情報が洩れるケースはほとんどありません。しかし、掲載される以上は第三者にバレる可能性もゼロではないことを認識しておくべきでしょう。
③ 連帯保証人に請求される
個人再生で整理する債務に連帯保証人がついている場合は、免除分の支払いは連帯保証人に請求がいきます。
家族などが連帯保証人になっている場合、迷惑がかかってしまうでしょう。
もし連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、任意整理を選択して、連帯保証のついている債権を外して手続をするのがベストです。
④ 債権者の同意がないと手続きできない
先述のように、小規模個人再生では、債権者の反対が多数であると個人再生に失敗してしまいます。
このため、債権者からの反対が予想されるケースでは、そもそも債権者の同意が必要ない給与所得者等再生を利用することになります。
4 個人再生手続きを検討中ならまずは弁護士へ相談を
個人再生は、債務整理のうちで最も複雑な手続となっています。一般の方が自分で手続きを行うことは難しいでしょう。
個人再生を含め、債務整理をお考えの場合には、一度当法人の弁護士にご相談してみてください。
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